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2006.09.23 Saturday

広汎性発達障害の支援は一人ひとり的に

 学会、教育相談、ゼミ、学校での研修会と連続で、かなりばて気味。今日から2日間は名古屋で「広汎性発達障害治療の新たな可能性ー最新の治療プログラムと最新の脳研究成果ー」という明治安田こころの健康財団の研修会です。
 
 今日は杉山登志郎先生が概論を、私が応用行動分析学の立場から、服巻繁先生がPECSプログラムについて、最後に十一元三先生がサーツモデルについて話題提供が行われました。

 様々な医学や生理学研究の進歩により、現在の行動評価による診断から、近い将来には複数の生理学的指標を用いた早期診断技術が確立されると思います。早期診断が可能でも早期支援が伴わなければメリットはありません。私はABAに基づくペアトレを含む保護者支援プログラムの紹介と医療との連携システムについて提案させていただきました。

 厚生労働省は発達障害に対して「標準支援策」を策定しようとしているようです。企画としてはすばらしいのですが、よほど慎重を期さないと、任意に選ばれた専門家による「おらが町の支援プログラム」が軒を並べることになりはしないかと危惧してしまいます。

 複数のプログラムの支援効果を客観的に検討していくことは今までも多くの学会で論議され、いくつかの研究がなされてきましたが未だ多くの課題を抱えています。方向としては歓迎すべきものだと思いますが、あくまで当事者の利用視点で論議されるべきでしょう。

 米国のものを含め、さまざまなプログラムをみるにつけ、「パッケージ化するとなんとなくきゅうくつになるなぁ」と感じます。しかもパッケージ化されたプログラムの一つ一つの中身を比較すれば結構共通点が多いのに気づきます。パッケージ化して名前つけないと売れないからそうするのでしょうか?どのプログラムも時代とともに少しずつ変化し発展していることを考えると、やはりむこうの開発者も満足していないんだなと思ってしまいます。
 
 したがって、どのパッケージが一番かという結論の出にくい論議ではなくて、目の前の一人ひとりの子どもや家族にあわせた支援メニューを、現時時点で提供可能な様々な素材から、プログラムの枠組みを超えて「お勧めトッピング」できるようなシステムについての論議が必要なのではないでしょうか。これがあれば学術的には仲が悪くても、上手な調理人の手によって複数の療法をうまく使い分けることもできると思います。目指すは、やはり「一人ひとり的プログラム」かな。最も重要な目的は当事者のニーズを満たすことで、「そのトッピングメニューがなぜうまいのか?」はあとでゆっくり学者でやり合えばいい。

 こう考えると、とりあえずあまりにもひどいプログラムに惑わされることのないように最低限の情報提供を行うことはまず重要で、その次にはそれぞれの支援技法では何ができるのかという点を真摯に客観的に詰めていくことが必要なのでしょう。
 料理の素材の特性をきちんと料理人が研究するように。 

井上雅彦 | 社会活動 | 23:53 | comments(6) | trackbacks(0)

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コメント

名古屋までの出張講演お疲れ様でした。
昨秋、井上先生に「このお料理にこのワイン」という喩えでご助言を賜りましたが、何週間か
悩んでいたことを思い出しました。
また「○○パッケージ」という宣伝に単純に飛びつくのも自分の欠点だと反省しました。

話は逸れるかもしれませんが、会社の商品を「信念を持って売り込もう!」と研修で上司が煽り立てるのと裏腹に、おきゃくさま方の生の声、格付けや社内の悪評の頻度が信念を持ちにくくさせ、活動のモチベーションが低下することに、苛まれております。
大勢の営業員がどさどさと特長が判別しにくい商品を持ち込んで、ワーワー宣伝しても、当のお客様を困惑させ、雑音にしか聞こえない場面をイメージしてしまいました。

ゆきんこ | 2006/09/24 12:17 PM

井上先生
こんにちは。研修会お疲れ様です。先生のエネルギーにいつも感服しています。それにしても凄い講師陣ですね。受講した方たちがうらやましいです。

さて厚労省の「標準支援策」、どうなるか期待していましたが、確かに個別の問題がありますね。標準化の流れのなかで、ラーメン屋対決のような「うちが一番」みたいなユーザー不在の学派争いは避けたいものですね。今後発達障害へのニードはどんどん高まると思うし、サービスの基本は人だから、腕の良い料理人をうまく活用できるようなシステム作りに期待してます。

ところで、来月東京での実技講座、楽しみにしています。先生、お体を大事にしてくださいね。

ムカイ | 2006/09/24 5:09 PM

ゆきんこさん ムカイさん
コメントありがとうございます。二日目も無事終了し新幹線で帰路についたところです。シンポジウムが終わった後のシンポジスト同士の意見交流が自分にとってすごく勉強にもなり面白かったです。

井上雅彦 | 2006/09/24 6:16 PM

「かなりバテ気味」でらっしゃいますか・・・。
子どもたちの周りで一生懸命支援してくださっている方たちがみなさん休みも十分に取れていない状況をみていると、親としてとても申し訳ないきもちになってしまいます。
私も、先生方に倒れられたらどうしよう、と恐れながらも頼ってすがってしまう、そんな親の一人なのです。すみません。

もし、厚生労働省の支援策が一生懸命な先生方の一助になるなら、歓迎すべきですね。

ただ、世の中、いろんな方がいますから。

例えば、《診断名がつく→それを親や本人が学校や職場などの現場に伝える→現場ではその診断名で“マニュアル”から“支援プログラム”を検索→目の前にいる本人を見ることなく、その子の支援プログラムが出来上がる。》なんてことがおこってくるのでしょうか・・・。

一人一人のしんどさが微妙に違うことやその子をとりまく状況が違うこと勘案して基本的な支援プログラムにオーダーメイドの加工をほどこすという技量のない人が、安易にとびついてしまうような発達障害の“支援マニュアル”などというものは、存在してはいけないのかもしれないです。

現場での個別の支援計画作りが軽視されて、「厚生労働省が出している支援マニュアルがあるから、もう個別の支援計画は作らなくてもいいじゃないか。」になったら困ります。

今は、書店にいけばたくさんの発達障害関連の本がならんでいて、ズバリ、“マニュアル”とタイトルについているものだってあります。
先生のおっしゃるように、よほど慎重にしていただかないと、厚生労働省版「発達障害者支援マニュアル」という本が書店に一冊増えるだけになりますね。

千葉 | 2006/09/24 7:49 PM

愛知で養護学校の教員をやっております。この2日間の研修会に参加させていただきました。中身の濃い研修会で大変勉強になりました。ありがとうございました。

プログラムの枠を超えた「お勧めトッピング」…先日聴講したセミナーでもある専門家が「美味しいとこ取り」という表現をされていました。パッケージにこだわると窮屈になり、理念も理解しないまま見よう見まねで真似ると間違った方向へ行ってしまう…上手な料理人になるにはやはり修行が必要ですね。

シャラコ | 2006/09/24 10:24 PM

千葉さん シャラコさん
コメントありがとうございます。

 講演でもよくする話ですが、本に載っているものやパッケージはあくまで診断に基づいたフリーサイズの服のようなもので、実際には採寸して(アセスメント)仕立てをし直さないと質の高い支援は望めませんよね。

 「標準支援」なるものがでたとしても現場の専門家のエンパワーメントはかえって重要になるとおもいます

 「だれでも使えるもの」の満足度はそれなりですが、凍えることをなくそうというレベルでは評価できるのではないでしょうか。

井上雅彦 | 2006/09/26 1:27 AM

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