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2007.08.09 Thursday

求むエビデンス脱藩同盟

 行動分析学会→三木市(不登校研修)→神戸市(発達キャンプ)→カンファ(大学)ときて今日は札幌にやってきました。

 先週、立教大学で行われた行動分析学会の学会企画シンポシンポジウム「エビデンスに基づいた発達障害支援の最先端」において話題提供をさせて頂きました。私の役割は「エビデンスに基づいた実践を我が国に定着させるための戦略」というお題について提言を行うことです。ちなみにここでいうエビデンスとは、効果があることの科学的実証に基づいた治療や支援を指しています。

 調べてみればみるほど、「エビデンス」と一言で言ってもいろいろな考え方があることがわかってきます。英国を中心としたコクラン共同計画(1992年にイギリスの国民保健サービスNational Health Service: NHSの一環として始まり、現在、世界的に急速に展開している治療、予防に関する医療テクノロジーアセスメントのプロジェクト)に代表されるシスマティック・レヴューを中心とした評価、米国の研究者を中心としたRCT(無作為化比較試験)をベースにした大規模研究による評価、学会レベルの有識者による評価、行政レベルの評価などなどです。

 発達障害、特に広汎性発達障害については、多様な症状に対する評価基準、独立変数となる介入の多様性と再現性、介入が長期間にわたる、ことなどから、「十分に立証された治療法」の基準を満たす特定の治療法は未だありません。

 それに十分に立証された治療法に準ずる治療法としては、唯一ABAによる早期集中介入プログラムがあげられていますが(中野2004)、このことは自閉症に関する国内外で毎年発表される膨大な数の事例研究の数にもかかわらず、発達障害系の臨床研究に関する大規模なRCTを用いた研究がいかに厳しいかを示しているように思います。

 我が国における発達障害心理臨床について考える場合も、エビデンスは常にプログラムの消費者である当事者とその家族の利益を最大にするということを目的に考えていく必要があります。

 そして私自身の立場、実践者であり研究者としての立場からは、最先端の科学性を持った研究としてのエビデンスの追求と同時に、現時点で届けられるサービスの中での最良のエビデンスの構築の両者を進めていく必要があるように感じています。シンポでは以下の2点について提議させて頂きました。

 1,効果研究の方法について知ること、自らの実践研究の効果研究としての質を厳しく自己評価すること、効果研究のレベルを段階的に引き上げる方向性を持つこと、RCT(無作為化比較試験)への研究ステップを作ること

 2.またマニュアル化、地域資源への技術提供とシステム化、適切な評価の方法の提供という形で既存の地域システムをABAの客観的評価技術によってエンパワメントするという視点を導入すること

 特に1については研究としてのストイックさを希求するということであり、そのための戦略をまずは共同研究や学会レベルで進めていくことです。

 2については我々自身が「療法」や「技法」にこだわることをやめ、他の支援方法を総合した現時点で我が国の地域で利用可能なベスト・プラクティスを提案するといったレベルでのエビデンスを作っていくということを意味しています。TEACCH有り、感覚統合有り、音楽療法有りの協働でというわけです。

 行動分析学の研究者の多くの諸先輩方にはおしかりを受けるかもしれませんが、自分がどこを向いて立つか?というスタンスを考えた場合、療法やプログラムではなく、まずは当事者ありきの視点から、今すぐに実現できるエビデンスは純粋な研究的な希求と同時に今必要なことであると思うわけです。

 奥田先生からも質問?を受けたのですが、私のいう提案は「場合によっては2の仕事をしていく場合、行動分析からも脱藩してください」という意味だったりします。もちろん私自身のフィロソフィーは人一倍ラディカルABAですが。

今年の滋賀で行われたアメニティーフォーラムのシンポで最初に提示したスライドの内容を以下に示します(奥田先生は明治維新に例えられていましたが、まったく同感、私もかつてこのことばをもじって使ってました、なかなか合うんだよねこれが)。

「脱療法浪士同盟の結成? 「療法」を守るのではなく当事者を守る」

心理学・教育学の分野では、同じ現象を異なった理論で説明するという理論的立場の違いが、応用分野の交流を困難にしてきた。
専門家の責務は、それぞれが最大の力を傾け、「自分の療法の生き残り」ではなく、当事者とその家族の最大利益を考えて議論すべきである。
そのためには数少ない専門研究者・臨床家の力を、立場を超えて結集させ、組織を作り、支援メニューを出し合い、補い合いながら、日本のどこでも可能な効果的な支援メニューを検証することが急務になると考えられる。

井上雅彦 | 実践研究 | 02:06 | comments(7) | trackbacks(1)

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2007/08/09 8:11 PM

コメント

> 2.またマニュアル化、地域資源への技術提供とシステム化

療育成功例を1回/月、記載URLに載せていっております。あくまでも我が家の体験談ですが...

先生の意図と方向が同じで、ご参考になれば幸いです。視覚支援を応用して、誰が見ても分かりやすいマニュアルができたら良いなと思います。

五合庵 | 2007/08/10 6:18 AM

井上先生
こんにちは。ご無沙汰しております。今僕はノースカロライナに来ているのですが、現地でTEACCHの協力しているデイ・プログラムを見学してみると、音楽療法や芸術療法も積極的に取り入れていました。「その人にとって必要なことは何でもやる」という姿勢が徹底していました。
こちらのTEACCHスタッフと話していると、自分自身のオリエンテーションに誇りをしっかりと持っていると同時に、柔軟に他業種とも連携を取っています。ラーメン屋の本家争いみたいなことではなく、真の「利用者中心」が実現できるといいなと思います。ぜひ同盟に加盟させてください!!

ムカイ | 2007/08/11 3:37 AM

ムカイさんと同じく、現在ノースカロライナに来ています。
私自身、TEACCHだけでなく、PECSや応用行動分析などを学びつつ、当事者に本当に必要なものは何かを探っている状態です。

真の目的(当事者の幸せ)に向かって共同できるのであれば、そんなすばらしいことはないと思います。

ぜひ仲間に入れていただきたいと希望します。

やましん | 2007/08/11 2:16 PM

みなさま

 ありがとうございます。メールをいただいた方も多く、うれしい限りです。

 まずは地域の支援事業に関して、行政サイドの方や関係者の方が、まとめていく際に、どのようなニーズを持った対象者に、どのような専門家がどのような介入をして、結果(事前事後)がどうなったか、ということを標準的なメジャーで押さえていければと思っています。その基準作りをいま行政サイドの方と協力して行っているところです。

 研究的なエビデンスとはかけ離れていますけどね。

井上雅彦 | 2007/08/17 1:19 AM

はじめまして。

さきほどこのブログを知り、読ませていただきましたが、先生の、脱藩同盟という立場に期待してメールする気になりました。

以前、行動療法の有名な先生と議論したのですが、理解してもらえなかったことがありました。
それは、自閉症の同一性保持は、変化への恐怖が根底にあるので、1種の恐怖症として治療することができるという考えです。

現に、自閉症の行動療法には、賞と罰の行動療法だけではなく、恐怖症の治療としての行動療法が含まれています。

私のホームページに詳細を書いていますので、検討していただければ幸いです。

白石 | 2007/08/25 1:44 PM

ぜひエビデンス脱落同盟参加せせてください。時代の流れか行政のながれか私自身が自閉症とかかわるようになってからもいろんな先生方の講演や研究発表を聞かせていただきました。今、どんな支援がいいのかいまだ模索中です。

白井愛子 | 2007/09/02 9:34 AM

管理者の承認待ちコメントです。

- | 2013/08/18 7:35 PM

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