2016.11.27 Sunday

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2016.11.27 Sunday

障害特性の理解と支援から個への理解と配慮へ

日本発達障害ネットワーク年次大会12月4日のシンポジウムでの話題提供の要約です。

発達障害のある人とその家族が、社会の中で幸せを感じながら生活していける環境を作っていくことは、うつや認知症、事故や病気による後遺症など我々だれもが遭遇する可能性のある困難を軽減できる文化や価値の多様性の構築につながっていく。

発達障害に対する理解が広まっていく一方で、障害とは何かということについて考えさせられる出来事もある。例えば、24時間テレビにおける障害の報道のされ方や障害のあるコメディアンが自らの特性を笑いのネタにすることについての論議などである。私はこのような論議が、私たちの社会が障害というものを理解していく上で重要なプロセスだと思う。

多くの人の障害のある人のイメージは「困っている人」というイメージが強いように思う。しかし、例えば自閉症のある方のすべてがその特性のために、起きている間中ずっと困難を感じているわけではない。好きな活動があり、それに没頭できる環境では、時として私自身うらやましさを感じてしまうほど、彼らは生き生きとしているようにみえる。一方、環境が変化したり、苦手な刺激があったり、自分のペースではなく他者や集団のペースに合わせて苦手なことをしなければならなかったりすればその様子は一変するのである。

WHOのICFによる障害の考え方は、このような環境要因による社会モデルと個人要因による医学モデルを調和させたものである。最近、私はご本人に自閉症の障害を説明する時、「体質」ということばをよく使う。例えば、「周囲の刺激に対して敏感に反応してしまいやすい体質」、「環境変化やネガティヴな体験に反応してしまいやすい体質」であることを理解していただく。次に「体質だから、疲れが溜まったり、変化が多い時期や環境では症状が出やすくなるから、予測してうまく防衛したり、周りとうまくやっていく工夫を考えていきましょう」、という具合である。

「特性」を理解して支援しましょうという場合、多くの人々に理解してもらうことが困難な行動は、他傷や他害などの「行動障害」と言われる行動である。私は行動障害に対する支援者研修の中では、支援者を感情的にしてしまうこれらの行動が、どのような刺激や環境によってもたらされ、どのような結果によって維持しているのかを学んでもらうようにしている。これは行動分析学の「機能分析」という考え方であるが、「特性」というものが「個に内在するもの」ではなく、「環境との相互交渉によって生じるもの」であるという理解をしてほしいと願うからである。こういった意味で行動分析学による行動の理解の視点は有用である。

自閉症という障害は、我々が快適と感じる刺激や普通に過ごせている環境に対して、困難が生じてしまいやすい体質の状態であって、その程度は一人ひとり異なっている。自閉症というものは我々が社会的支援の要請に応じて線引きした「仮説構成概念」であるから、「すべての自閉症のある人にとって良い環境」というのは存在しない。もちろん特性に基づく啓発や環境整備は最初のステップとして必要なことであるが、これはあくまで歩行が困難な人たちに対して、許容できる段差は何センチと定義するようなものである。特性に対する支援とは、正確には「かなり多くの自閉症のある人に対するよい環境」であるということを認識すべきであり、最終的には極度な感覚過敏性や行動障害のある方といったマイノリティの理解へ、つまり個の理解と支援に向かうべきである。

自閉症をはじめ発達障害のある人の困難は環境や体調だけでなく成長によっても変わっていく。自閉症の特性に配慮した環境作りは、最終ゴールではなく、「合理的配慮」として個人やその時のその場面に対する支援を加えていく必要がある。個に対する支援を「合理的配慮」と言い換えることによるメリットは、「選択と決定」、「合意形成と見直し」というプロセスが重視され、支援が「与えられるもの」から「個人が選択するもの」という個人にとって主体性のある状態として強調される点にある。

医学モデルに基づいた障害特性に対する理解と配慮から、個人に対する理解や配慮へと進んでいくことが、我々が障害種を超えて他者を理解し、互いを尊重できる社会へ向けての課題となるのではないだろうか。

井上雅彦 | - | 14:40 | comments(0) | trackbacks(0)

2016.11.27 Sunday

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